みどころ

第1章
王の登場

埴輪は王(権力者)の墓である古墳に立てられ、古墳からは副葬品が出土します。副葬品は、王の役割の変化と連動するように、移り変わります。古墳時代前期(3~4世紀)の王は司祭者的な役割であったので、宝器を所有し、中期(5世紀)の王は武人的な役割のため、武器・武具を所有しました。後期(6世紀)は官僚的な役割を持つ王に、金色に輝く馬具や装飾付大刀が大王から配布されました。このほか各時期において、中国大陸や朝鮮半島と関係を示す国際色豊かな副葬品も出土します。ここでは国宝のみで古墳時代を概説し、埴輪が作られた時代と背景を振り返ります。

国宝 金象嵌銘大刀
国宝 衝角付冑、国宝 頸甲、国宝 横矧板鋲留短甲

国宝 (きん)(ぞう)(がん)(めい)()()

奈良県天理市 東大寺山古墳出土
古墳時代・4世紀〔刀身:中国 後漢時代・2世紀〕
東京国立博物館蔵

中国の後漢王朝で2世紀に作られた大刀で、銘文には後漢の年号「中平」(184~189年)が入っています。当時、「倭国大乱」とも表現された戦乱の日本列島に贈られた大刀は、200年間保管され、日本製の花形環頭柄頭がつけられて東大寺山古墳に納められました。

国宝 (しょく)(かく)(つき)(かぶと)
国宝 (あかべ)(よろい)
国宝  (よこ)(はぎ)(いた)(びょう)(どめ)(たん)(こう)

熊本県和水町 江田船山古墳出土 古墳時代・5~6世紀
東京国立博物館蔵

王に軍事的リーダーの姿が求められた古墳時代中期、そのような時代背景と、金工技術の発展を示すのが、鉄製の甲冑です。横長の鉄板で基本構造を作る短甲が考案され、朝鮮半島から取り入れた鋲留め技術で鉄板を固定しました。ヤマト王権は多数の甲冑を、各地にいた勢力下の王たちに配布したと考えられています。